「赤毛のアン」の島6 モンゴメリが眠る墓地と遺族の決断


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小雨や曇りの日が続いたプリンスエドワード島(Prince Edward Island: 以下PEI島)滞在3日目、

空は抜けるような青でした。夫が言います。

「PEI島は広いから見てない所が一杯あるよ。島の観光に行こうよ。」

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(私達のロッジの庭にやって来たキツネ)




実は私は別のことを考えていたのですが、

前日はアンの家とモンゴメリ住居跡で4時間半も過ごして、夫に十分付き合ってもらったので、

今度は彼のしたいことをする順番だと思い、夫が行きたい所へ観光に行くことにしました。



島の南にあるアケイディア(フランス系移民)の多く集まった村や、名前を忘れた可愛いレストラン、

PEI島独特の赤い道がどこまでも続いている草原など、

島の美しさを目の当たりにして、憧れのPEI島にいるんだと実感しました。




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(アンとマシューを乗せた馬車が今にも見えてきそうなPEI島の赤い道)


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モンゴメリが「プリンスエドワード島は世界で一番美しい場所」と形容した通り、

何処も彼処も本当に美しい所でした。



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PEI島はシーフードが美味しいと聞いていたのですが、

中でもロブスターとムール貝は信じられないほど安くて美味しいです。

いきなり現実的な話で申し訳ないですが、ロブスターは1Kgが約500円程、ムール貝はさらに安かったです。

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ロッジ近くのビーチでもムール貝がゴロゴロあって、踏まずに歩くのが難しいほどでした。

私達は地元の人が行くスーパーで野菜やシーフードを買って、

2日目の夜からレストランへ行かないで、自炊しました。

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夫と一緒に観光や夕焼けのディナーを楽しむ一方で、

私の心に沸々ともたげて来るものがありました。



「モンゴメリの墓地にお参りして、冥福を祈りたい…」

だけど、PEI島に一緒に来てくれて、もう十分付き合ってくれた夫を

これ以上引っ張りまわすのは悪い気がしたので、そのことを口に出せずにいたのです。

「彼はそこまではしたくないだろうな…。」

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そのまま3日目が過ぎ、4日目…翌日はPEI島を離れるという日の午後、

観光を終えロッジに帰る途中で、給油するためにガソリンスタンドに立ち寄りました。

夫がガソリンを入れている間、何気なく外を眺めていると、通りの向こうに村の墓地が見えました。



ゲートに書いてある文字を読んでみると、こう書いてあったのです。

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「L・ M・モンゴメリが眠る場所」

「嘘でしょう~!?」あまりの偶然に鳥肌が立ちました。



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ゲートから少し離れた場所に、ゼラニウムとアリッサムで飾られた一角があったので近づいてみると、

「ユーアン・マクドナルド」と書いてある墓石に、小さくモンゴメリの名前も見えました。



モンゴメリの夫ユーアンは妻が亡くなった1年後に亡くなりました。

モンゴメリが愛したPEI島のキャベンディッシュ(「赤毛のアン」の中ではアヴォンリー)の墓地で、

二人は静かに眠っています。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・☆☆☆☆☆・・・・・・・・・・・・・・・・・・




私達がPEI島を旅したのは2013年9月3日~7日、今から4年4か月前のことです。

この旅行記を書く前に、「赤毛のアンの島」5でジェニーさんから聞いた話の裏付けを得るために、

モンゴメリの孫娘ケイトさん(Kate Macdonald Butler)が2008年9月に発表したエッセイを読んでみました。



ケイトさんは、モンゴメリが亡くなった時に駆けつけた三男スチュアート(医師)の娘さんです。

彼女自身はモンゴメリが亡くなった後に生まれたので、面識はないそうですが、

大人になって、父親から祖母モンゴメリの自死に関する話を聞いたそうです。



そのことは長い間家族だけの秘密だったそうですが、

モンゴメリを助けられなかったことで、長い間苦しんできた遺族の方々は、

2008年「赤毛のアン」出版100周年を迎えて、彼女の本当の死因を世間に公表する決断をしました。



決断に至った理由は、

「心を病むのは特殊な人々ではなく、誰にもその可能性がある。

世界的名作を生んだ人気作家であっても例外ではないのだ。」と、

多くの人が知ることによって、心の病に対する偏見が少なくなり、

病に苦しむ人達が助けを求められやすい社会になるのではないか?と考えたからだそうです。



モンゴメリが自分一人で苦悩を抱え込まないで、誰かに助けを求められることが出来ていたら…

或いは心労が酷くなる前に、愛するプリンスエドワード島に帰って来ることが出来ていたら…
(当時住んでいたのは、カナダのトロント市)

彼女は悲惨な最期を迎えずに済んだかもしれません。



モンゴメリは「世界中に夢と希望を与えることができても、自分自身は不幸だった作家」と言われていますが、

彼女が偉大な作家だったという事実に変わりはないし、

私にとっては、今までもこれからも憧れ続ける、永遠に素晴らしい女性です。




「赤毛のアンの島」これで終わりです。


*4回に分けて書こうと思った旅日記ですが、

書き始めると、聞いた話やエピソードが一杯あって6回に膨れ上がってしまいました。

長い旅行記を読んで下さって、本当にありがとうございました!



それでは皆様、幸せな一日をお過ごし下さいね!


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by mimozacottage | 2018-01-08 08:14 | 赤毛のアン | Comments(12)
Commented by ろんまま at 2018-01-08 10:52 x
ミモザさん長いお話を 有難うございます。
ブログを読ませて頂くのが  とても楽しみでした
社会が少しずつ病気にたいする考えが変わってきているとは思いますけど  まだまだ偏見があって
本人及びご家族  ご苦労が絶えませんね
私も違う病気で娘を亡くしております
あれから23年 たちましたけど いまだに私たちは
悲しみの中におります  世の中には優しい人たちが
沢山おられますけど 中にはここぞとばかりに
いじめにかかる人がいるのも事実です 
今ありがたいことに優しさに包まれて暮らしていますモンゴメリーさんも周りの皆様も優しさ包まれていると思います  一度は訪ねてみたいカナダ 私の年齢ではもう無理ですね
Commented by kumikko0084 at 2018-01-08 14:44
こんにちは♪
明けましておめでとうございます。

小さな頃から、赤毛のアンが大好きです!
ミモザさんのブログに影響されて、実家に置きっぱなしのアンの本はちょっと古すぎるので、新しく買い直しました。
お恥ずかし事ですが、私は海外へ行ったことがありません。
一生のうちに一度でいいから行きたいところは、プリンスエドワード島ですね。
アンとマシューを乗せた馬車が通る「赤い小径」をいつか歩いてみたいとよく思います。
美しく楽しい旅行記、ありがとうございます(^-^)
Commented by Olive07h at 2018-01-08 20:17
本年も宜しく お願いもうしあげます。

プリンスエドワード島の数々の画像を楽しませて頂きました!
赤毛のアンのご本を 手にしてみたくなりました。
mimozaさんの書かれた記事を 再度  じっくりと拝見したく!!

森の家(山荘)では赤毛のアンや大草原の小さな家に憧れて♪ 暮していらっしゃる方々を存じております

どのようなご婦人かしら?と想像しながらの貴女様の記事は 日常の雑多な世情から メルヘンへ♪
貴重な記事 お写真の数々 ありがとうございます!
Commented by shownan-rose at 2018-01-08 21:54
ミモザさん、プリンスエドワード島の旅行記を、楽しく読ませて頂きました。
ブログの最終章を読んで、とても感動いたしました。
『赤毛のアン』や作家モンゴメリへの敬愛の念が伝わって来ました。
そして、写真を拝見して、驚きました。
実は、2000年夏に、家族でプリンスエドワード島を旅し、宿泊したロッジが同じような気がしたのです。さっそくアルバムを出して確認したところ、とても似ていて確信しましたが、定かではありません。前に、広大な芝生(原っぱ)が広がっていて、ボールを蹴って遊んだり、、。我が家も自炊をしたんですよ。
キャベンディッシの町、ケンジントン駅舎など、、
のどかな景色と共に、今も鮮明に覚えています。
Commented by ann at 2018-01-09 07:35 x
4年前の旅の記憶を思い返されて、ご主人への気持ちも新たになったでしょうね
毎日一緒にいるとだんだんだれてきちゃうからね~
お互い気遣いながら暮らしておられる様子がしのばれます

モンゴメリの結婚は幸せな生活ではなかったことは、薄々知っていましたが(訳者のあとがきなどで)自死だったとは存じませんでした
その分よけいに著作がロマンスにあふれていたのかもしれないですね

私はアンよりもマリラのほうに似ているのですが、アンのような生き方には憧れます
Commented by mimozacottage at 2018-01-09 09:21
> ろんままさん

コメントありがとうございました!
プリンスエドワード島の旅は今までの旅行で最も記憶に残る旅の一つです。
記憶が消えないうちに、見たこと聞いたことを書き残しておきたいと思ったので、
長くなってしまいました。
モンゴメリが生きた時代よりずいぶん変わったとは言え、
まだまだ偏見が残っていますね。遺族の方の決断はとても勇気がいることだったと思います。
遺族の方の中でも、息子さんは特に苦しまれたようです。

そうでしたか…言葉が出ません。
我が子を亡くすほど辛いことはありませんね。
そういう時に虐めなんて…心無い人がいるものですね。
そういう人、断じて許せません!
辛い出来事を思い出させてしまってごめんなさい!

ろんままさん、今は良いご家族に恵まれて、
x氏もX氏のご家族も温かそうな方達で本当に良かったですね!
PEI島は結構ヨーロッパから近いですよ。
ろんままさんの行動力なら、絶対大丈夫だと思います(^-^)
Commented by mimozacottage at 2018-01-09 09:30
> kumikko0084さん
こんにちは♪
明けましておめでとうございます!
Kumikkoさんもアンのファンでいらしたんですね~
親近感が湧きます。(*^^*)

海外に行ったことがないのは、ちっとも恥ずかしいことではないと思いますよ。
私が日本を出たのも子供が生まれてからです。
Kumikkoさんはプリンスエドワード島にお似合いです。
自然が一杯でとても可愛らしい場所なので、是非いつか行ってみて下さい。
お子様達に「赤毛のアン」を読んで上げたら、
みんなで行きたいと思われるかもしれませんね(^_-)-☆
Commented by mimozacottage at 2018-01-09 09:39
> Olive07hさん
こちらこそ、今年もよろしくお願い申し上げます!

ありがとうございます♡
プリンスエドワード島は本当に美しい場所です。
私の写真の腕では美しさが半分も伝わらないのが残念なんですが…
「赤毛のアン」はそれはもう名作ですから、
私の記事なんて100分の1もその魅力を伝えることが出来ません。
是非、是非、原作をお読みになって下さいませ。

Oliveさんがお住まいの場所は、
「大きな森の小さな家」的なロマンチックなところですよね!
羨ましいな~✨
私は何処にでもいる普通のおばさんです。
年はOliveさんと同じぐらいかな?と想像しております。
Commented by mimozacottage at 2018-01-09 09:55
> shownan-roseさん
ありがとうございます♪
「赤毛のアン」やモンゴメリに対する私の憧れ、敬愛は仰る通りとても強いです。
プリンスエドワード島に行ってから、一層敬愛が深まりました。

ローズさんは世界中を本当に色々旅していらっしゃいますね。
だから、英語がお上手なんですね!

え~ッ!そうなんですか?
私達が宿泊したロッジはSeawinds Cottages という所で、
アンの家からは車で5分ほど、ロッジの前に広い芝生がありました。
本当に同じところのような気がしますね!

そうそう…私は旅行が好きなので、ローズさんのご旅行の記事を拝読したら、
石和温泉のホテルが私達が宿泊したのと同じでした。(^-^)
その時、私達は勝沼のぶどう郷へ行きました。
Commented by mimozacottage at 2018-01-09 10:15
> annさん
もう4年も前になるのですが、
記憶が消えてしまわないうちに書き残しておきたかったのです。
夫と私はたぶん相性がいいのでしょうね、
普段は気を遣わないでも不思議とケンカにならないのです。凄い頑固者同士なのに…
この時は前日に4時間半も引っ張り回したから、ちょっと気を遣いました。(^^;)

モンゴメリは死の直前まで輝くばかりの幸せな物語を書き続けていました。
そうすることが彼女の癒しになったというのもありますが、
夫の病気を隠すためにそうしないといけなかったようです。
どんなにか苦しかったのではないかと思います。

そうなんですか!!マリラはとても面白くて大好きです。
地に足がついて家事がテキパキできて、綺麗好き…
私が出来ないことが全部できるので、憧れます♡

いつもコメント下さってありがとうございました!
プリンスエドワード島旅行記を書いてよかったと思うことの一つは、
隠れファンだったAnnさんと交流が生まれたことなんです。
これからもよろしくお願いします。(^-^)
Commented by milletti_naoko at 2018-04-30 08:14
苦しみに遭いながらも、あくまでも希望の火を皆の心に灯す作品を書き続け、皆に笑顔で接した…どうにかして苦しみから救えることができればという思いはありつつも、そういう意味で、やはりすばらしい作家だったのではないかと思います。様々な意味で苦しい状況にあり、追いつめられていたモンゴメリと重ねてはいけないのですが、日本の近代・現代の文豪にも、自殺を遂げた人が多いですよね。太宰治や芥川龍之介は、あまりにも世の中が見えてしまうがために、よけいに苦しみも多かったのではないかと思うのですが、そこを突き抜けて、そういう世やあるがままの自分を受け入れられる、頭の賢さではなく心の豊かさが持てればよかったのだけれど、名作はそれができなかった心の軋轢から生まれたのだろうかということもあって難しいですね。すみません、話が逸れてしまいました。

あえて告白をされたご遺族のご決断も、また、病気についての理解が図れればという思いも、すばらしいと思います。他者、自分が経験したことのないものへの無理解が、減少どころか増えていくように思える中、こういうご家族の思いや在り方にならわなければとつくづく感じます。ミモザさんのブログを通してでなければ、きっと知ることがなかったのではないかと思います。どうもありがとうございました。
Commented by mimozacottage at 2018-05-01 00:32
> milletti_naokoさん

Naokoさん、こんにちは。
古い記事を丁寧に読んで下さってありがとうございます!
Naokoさんは国語の先生でいらっしゃるので、ご専門はきっと日本文学なのでしょうね。
太宰と芥川、二人の名作が生まれる背景のお話…興味深くお伺いしました。

私は専門的な知識は全くありませんが、本が好きで太宰には結構傾倒しました。
芥川龍之介のことはあまりわからないのですが、
太宰治の自死の理由は形而上学的な悩みと言ったらいいのか、
自分の存在の意味を問い詰めた挙句の死のように思います。
若者に多い自死理由のひとつですね。

彼の作品には自殺を示唆するような記述が多いですが、
モンゴメリの場合は全くないというか、正反対の世界が描かれていたので、
周りの人のショックがよけい大きかったと思います。

私にとっても衝撃で、実は旅行記にそれを書くべきかどうか少し迷いました。
だけど、うつ病に苦しむ人が周囲から理解されなかったり、
社会の偏見のために治療を受けられず苦しみを深めるという現実が今もあるので、
人々にショックを与えることになっても、このことを書くべきだと思いました。
(それがモンゴメリの遺族の方が望んでおられることだし)

未熟な者がこんなことを言うのはおこがましいのですが
私のライフワークは、「自殺やいじめのない社会を実現すること」と考えているので、
少しでもそれに貢献出来たら…と思ったのです。

来年3月には文学ツアーのためにイギリスに行く予定ですが
その次のヨーロッパ旅行はイタリアに行きたいので、
Naokoさんのブログを参考にさせて頂いて、旅のプランを練ろうと思っています。
素晴らしい記事をいつもありがとうございます!
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